雑穀―あわ、ひえ、きび、もろこしなど

「雑穀」という言葉には米麦以外のその他とるに足らないものという意味を暗に含んでいるのではないでしょうか。たしかに雑穀は、米麦のとれないところで主に作られてきたため、貧しさや文化的な遅れのように思われがちです。

 

 しかし、昭和30年代に入って、米が完全に自給されるようになるまでは、私達日本人にとっては、とても身近な存在だったのです。今でも小川や東秩父の畑を注意深く観察すると、ほんの少しですが、いろいろな雑穀(アワ、きび、もろこしなど)が育てられていることに気付くでしょう。農林水産省の作物統計から、あわ、ひえ、きびが消えてから四半世紀がたって、もうこの世から、すっかり消え去ってしまったように思われがちですが、地域のお年寄りの中には、それらの種を絶やさずに育て続けてくれている人もいます。

 

 雑穀が貧しさの象徴だった昔とは異なり、今では、雑穀の持つ、米にはない性質が明らかになってきて、栄養面でも注目されるようになりました。ヒエを精白した場合、白米と比べるとタンパク質は1.7倍、脂肪は15倍、ミネラルも3倍多く、ビタミン(特にビタミンB1)が失われないなど、きわめてすぐれたものです。

 

 長寿で有名な日本各地の山村(山梨県棡原など)では、食生活の中に雑穀が上手に活かされていました。そういう所では、食生活の洋風化、インスタント化で、若年層の方が先に亡くなられてる例が最近多くなってきているそうです。

 

 作る側から見たとき、忘れてはならないのは、雑穀類の実だけではなく、その残りのワラです。牛や馬の飼料にとても良く、例えば、稲わらにくらべタンパク質は1.5倍、カルシウムは2倍も多く含んでいます。私達の仙達が雑穀を大切にした理由はここらへんにもありそうです。地域の資源(土地、太陽、有機物など)を最大限にいかしながら作物を作り牛馬を飼うという生活は、雑穀を取り込むことで豊かなサイクルを作ります。雑穀が、人・家畜を養い、家畜や人間の出す糞尿がより豊かな収穫を約束する。日本人が長い世代をかけて育ててきた生産と生活の枝を雑穀を通して見、考え、感じることができます。

 

 食べる側からは、新しい工夫があります。雑穀を使ってとてもおいしいおかずができます。例えば、モロコシは、ハンバーグ、ギョウザ、シュウマイ、コロッケ等。あわ、きびは卵とじの卵の黄色とこく。ひえは、白身魚の歯ごたえと風味、そばつぶはポーク風。それぞれの雑穀の特長を生かした贅沢な食卓を楽しんでみてください。

(桑原)