◆踏み込み温床

  夏の盛りにナスやトマトを収穫するためには、まだ朝夕は凍りつくような寒さの2月、3月に種を蒔かなければなりません。露地では寒くてとても育たないので、まず温かいところ(温床)で苗を作り、それを5月頃になってから、畑に定植するという方法をとります。

 

 重油を燃やしたり、電気を使ったりしない、昔ながらの踏み込み温床の作り方は、まず、畳1~2枚分の大きさに木や竹で枠を作り、稲わらで厚く囲います。そして、その中に炭素を多く含む有機物(落ち葉、おがくず、籾殻など)と、窒素を多く含む有機物(おから、米糠、牛糞、鶏糞、馬糞など)を交互にサンドイッチ状にいれて、たっぷり水をかけ、足でしっかりと一段づつ踏み込みます。山のような落ち葉も水をかけて踏み込むと、ぺちゃんこになるので、たくさん集めなければいけません。6070cmくらい積んで、土をかぶせ、覆いをかけて1週間ほどおくと発酵し始め70℃もの熱が出てきます。さらにしばらくおくと下がり始め、大体25℃30℃位の温度が2ヶ月ほど維持します。これが踏み込み温床です。そこで温床の上に苗箱をおいて種を蒔きます。 それでも夜の空気はとても冷たいので、夜はしっかりと覆いをかけてやり、昼間は太陽の光をあててやります。こうして5月まで、毎日毎日、水をやって、慈しむようにして苗を育てるのです。

 

  陽気が暖かくなって、苗を畑に定植した後、用済みになった温床は、枠の中から取り出して、野積みして風雨にさらして1~2年置きます。そうすると、大変良い腐葉土となって、苗を育てるための用土として使えるので、この方法は、一石二鳥で、無駄のない方法だと思います。

 

 ナスやトマトの他に、温床に蒔く種は、キャベツ、ブロッコリー、レタス、ピーマン、シシトウ、キュウリ、かぼちゃ、モロヘイヤ、オクラ、メロン、スイカ、などがあります。さつまいもの伏せ込みをして、苗をとるのみ同じような温床を作って行われます。

(和気・岩崎)